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法律事務所みちしるべのスタッフ です。
以前、人身事故で賠償される損害についてご紹介しましたが、そのなかのひとつ休業損害について。
事故によって仕事を休んだために得られなかった収入を補償する「休業損害」(休業補償)という項目があります。
https://michi-law.jp/koutsu/#kyuuson
今回は、休業損害のなかでも大学生・高校生の方の休業損害についてご紹介します。
参考:赤い本 「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」
参考:裁判所判例
学生さんの休業損害が賠償されるケースは少ない
大学生や高校生が人身事故にあってケガをした場合には、原則的には休業損害は認められません。
どういう場合に休業損害が賠償されるかというと、大きく分けて2つあります。
- 就職が遅れた
- バイトを休んだ
大学生・高校生が交通事故のケガのせいで就職できなくなった場合の休業損害
専門的な解説は弁護士にお任せしますが、サラリーマンの方の休業損害は、お給料の金額をもとに計算をします。
では、実際にはまだ働いていない高校生や大学生が、人身事故のせいで就職できなくなった場合の休業損害は、どうやって計算するのでしょうか。
人身事故で重要になる資料のなかに、賃金センサスというものがあります。
賃金センサスとは、毎年実施されている政府の「賃金構造基本統計調査」の結果に基づいて、労働者の性別・年齢・学歴別等に平均収入をまとめた資料です。
学生さんや主婦など、事故の前に実際の収入がなかった方の損害を計算するときに、この賃金センサスが使われます。
内定が決まっていた場合は、就職先のお給料をもとに休業損害を計算することが多いようです。
示談金ってどうやって計算するの?人身事故で賠償される5つの損害過去の裁判例のなかで、学生さんの休業損害が認められた事例を調べてみましたのでご紹介します。
専門学校生が大事故にあったときの休業損害
- 学年:専門学校生(18歳)
- 事情:右目失明や顔の傷痕で後遺障害併合5級
専門学校に通っている段階でとても大きな交通事故に遭った学生さん。
学校の卒業は翌々年の春と、すこし先でしたが、事故のケガがとても大きく、長い年月をかけて治療することになりました。
専門学校を卒業したはずの年を超えても、さらに数年治療が続いていたという事例です。
この方は、事故がなければ普通に専門学校を卒業して、普通に就職できていたはずと認定されて、長い治療期間のうち、本来ならば卒業して働き始めていたはずの日から、治療が終了した日までの間についての休業損害が認められました。
実際には就職先が決まっていたわけではないので、お給料ではなく賃金センサスの「男性高専短大卒20歳から24歳平均収入」を基礎に休業損害が計算されました。
この裁判では、休業損害の金額は989万円と認められました。(約40か月分)
- 裁判年月日:平成24年7月30日
- 裁判所:大阪地裁
就職が内定していた大学院生が交通事故にあって内定取り消しになったときの休業損害
- 学年:修士課程後期在学生(27歳)
- 事情:交通事故のケガで内定取り消し
大学院で修士課程在学中に大きな交通事故に遭った学生さん。
すでに企業への内定が決まっていましたが、大けがによって就職が困難な状態だったため、内定取り消しになってしまいました。
この方の場合は、就職予定日が決まっていたので、その日から症状固定日までの休業損害が認められました。
また、休業損害の金額の計算には、就職予定だった企業から回答してもらった「給与推定額」を用いました。
この裁判では、休業損害の金額は955万円と認められました。(2年6か月分)
- 裁判年月日:平成14年9月20日
- 裁判所:名古屋地裁
大学生が事故にあって留年したせいで就職が遅れたときの休業損害
- 学年:大学生(21歳)
- 事情:交通事故のケガで留年して1年半就職が遅れた
交通事故で大けがを負ったせいで学校に通えず留年してしまった方の裁判例です。
大学を留年することで就職活動の予定も狂い、本来であれば就職して働き出したであろう時期よりも、1年半遅れて就職することになりました。
この方は、就職が遅れた期間を休業損害として認められました。
実際に就職先が決まっていたわけではないので、お給料ではなく賃金センサスの「男性大卒20歳から24歳平均収入」を基礎に休業損害が計算されました。
この裁判では、休業損害の金額は479万円と認められました。(1年半分)
- 裁判年月日:平成12年12月12日
- 裁判所:東京地裁
交通事故で内定や入学がなくなってしまった学生さんは、弁護士に相談してみてください
ご紹介した事例はすべて、示談交渉で話がまとまらず裁判で争われた事例です。
給与明細で算定がしやすいサラリーマンの方と違い、学生さんの休業損害は、それぞれの事情によって全く変わります。
せっかく努力して決まっていた内定や入学が、交通事故のせいでなくなってしまうのは、頑張ったご本人にとっても、応援していたご家族にとってもものすごく悲しいことです。
適正な補償を受けられるように、早めに弁護士に相談することを強くお勧めします。
弁護士に事件を依頼する場合、契約が必要になります。
未成年者の方のご依頼をお受けする場合、親権者の方と契約をすることになります。
お問い合わせの際に、事故の被害者様が未成年者である事をお伝えいただきますと、ご案内がスムーズです。
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